山口小夜子

●山口小夜子さんが亡くなった(2007.1.21 BLOG)


京朋カレンダー 

1976年前年フリーになった僕に、横尾忠則さんから直接電話があった。

横尾さんとは篠山紀信さんのアシスタント時代、一緒にインドに行った関係だった。

週刊プレイボーイで僕が撮った、アメリカの女性ロックグループ、

ランナウエーズの写真、面白かったね、と。

ところで、着物のカレンダーをやって欲しいんだけどという。

もちろん即座に受けたもののそのカレンダーがどんな内容かわからなかった。

打ち合わせをして始めて、僕はことの重大さを知った。

着物は、横尾さんがテキスタイルデザインをした、

三宅一生さんのフライングイッセイという、ファッションショーで使った洋服の生地からつくることになっていた。

モデルは、すでに世界的なモデルの山口小夜子さんだった。ヘアメイクは、川邊サチコさん。

僕以外は全員、当時の超一流だ。

横尾さんは、表紙が1枚と、カレンダーは6枚の、計7カットが必要だとだけ言った。

撮影は屋外で1日半。内容は、全て僕がプランし、いってみれば自由に撮っていいといわれた。

その時僕は、着物を海で撮りたかった。

通常着物の撮影は、ポーズをとり、定番の動きのなかで撮る。

僕は洋服と同じように自由に撮りたかったのだ。

ぼくはその頃、静岡の浜岡砂丘によく通っていた。いまでは想像できないが、

砂丘というのがぴったりな広々とした場所だったからだ。

なんどかロケハンに行き、拠点である宿泊場所を御前崎観光ホテルに決めた。

僕はおおざっぱな撮影案を横尾さんに話した。好きなように撮っていいといわれた。

僕以外多忙な人たちだ。撮影時間は短い。7カットをまる1日半で撮るのだ。

僕は二日前から現場に来て綿密に予定を立てた。

初の撮影は、昼間、大井川で撮った。

5月6月ための撮影だ。水に浮かぶ小夜子を撮りたかった。

強い陽射しの下、約1時間、もしかしたらもっと長かったかもしれない、

小夜子さんは水の中に浸っていた。きっとかなり消耗したのだろう。

その夕方、御前崎の近くの海岸で、9月10月のシーンを撮った。

撮影を始めてしばらくして、突然小夜子さんは口から何かを吐き出して、倒れてしまった。

この写真は、倒れる寸前の小夜子さんだ。 鬼気迫っている。

そのときは僕は、ひるむことなく撮り続けて、一生さんや横尾さんに、写真家根性を、褒められた?

そんな撮影の最中、横尾さんはなんの指示もせず、座禅をくんで、メジテーションをしていた。

ライティングはシンプルに、小型ストロボを報道カメラマンのようにカメラにつけて撮った。

この写真は出来上がってから驚いた。とりつかれたような小夜子の表情。

後かたづけや準備で、ホテルに戻ってからも宴会をするわけでもなく、何を食べたかも覚えていない。

実は翌日早朝撮影だったから。僕は3時半には現場に着きたいと言った。

僕はすぐに寝た。そしてすぐ目が覚めた。僕は自分のことがせいいっぱいで、

その時、横尾さんや、三宅さん、川邊さん、小夜子さんがどうしてるのかしらなかった。

アシスタント2名、僕らの小型のロケバスの運転手がチームだった。

早朝3時ごろには、着いた。

場所は、大井川の河口、玉砂利の海岸だった。バスは近くまでは寄れず、ずいぶん歩いた。

ライティングは、サンパックの小型ストロボ1灯という極めてシンプルだったけど、

まっくっらなのでジェネレーターで灯りをつけた。

全員空がしらんでくるまえに、準備万端だった。

小夜子さんは人形のように、玉砂利の上に座った。

僕は手持ちでスローシャッターを切っていたので、背景がブレすぎないように注意しながら撮った。

この写真は、この頃撮ったなかで僕の一番好きな写真だ。

影場所は、結局3箇所になった。バスがなるべく近づけるところが条件だったからだ。

そのため浜岡砂丘は使わなかった。

朝の撮影が終わり、午前中は、黄色い着物を撮った。ジェネレーターで大型ストロボを1灯、イエローのフィルターを

かけて、サイドからライティングした。今回、昼間や早朝、夕方を含めて、非現実的な雰囲気に

撮りたかった。昼間撮っても怪しい雰囲気に写ることをイメージした。

午後は同じ海岸で、黒い水着のような衣装を着た。天気がよく、金色のレフ板を強くあて、

逆光でアンダー気味に撮った。

最後に、茶色の着物を暮れゆく海岸で撮った。ライティングは500wとのアイランプ1灯。

極めてシンプルなライティングだけど、背景とのバランスも取れ、いい雰囲気に写った。

撮影が終わると、打ち上げをすることもなく、皆帰っていった。

皆くたくただった。でもいいものが撮れた感触はあった。

そして、なにより山口小夜子のプロ根性を知った。

表紙  Canon F1 200mm f2.8 KR 500w アイランプ1灯

1月2月 Canon F1 FD24mm f2.8  KR サンパック1灯

3月4月 Canon F1 200mm f2.8 KR バルカーストロボ 

5月6月 Canon F1 50mm f1.4  

7月8月 CanonF1 24mm KR

9月10月 Canon F1 24mmf2.8 KR サンパック1灯

11月12月 Canon F1 FD24mm KR アイランプ1灯


AD Tadanori Yokoo

Cos Issey Miyake

Hair Make Sachiko Kawabe

Model Sayoko Yamaguchi

Photograph Alao Yokogi

Aug 1976

Kyoho Kyoto KIMONO GANNEN


写真があがると横尾さんは、この写真は横木君の作品だからと、写真の上にいっさい文字をのせず、

カレンダーのタマなどすべてを月ごとに、別刷りのビニールフィルムに印刷した。

そのため、ビニールをはずすと、文字のないポスターになった。

この年のカレンダーの賞を受賞した。

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